コラム

原状回復工事とその重要性

原状回復工事とは

原状回復工事とは、賃貸物件で借主が退去する際に、物件を「契約当初(入居当初)の状態」に戻すためのリフォーム工事のことを指します。この工事の目的は、契約当初に近い状態にリフォームすることで「物件の価値を維持」しながら、次の「入居者様が快適に利用できる」ようにする意味合いもあります。以下に、原状回復工事の概要や具体的な内容、大切なポイントについて詳しく解説します。

 

原状回復工事の必要性

 

原状回復工事は、主に賃貸物件における「賃貸借契約」に基づいた義務です。

賃借人(借主)は、故意・過失による傷・汚れ・損耗等については、経年劣化や自然損耗した分を除き、原状回復義務として修復することが求められます。工事施工者は管理会社の指定業者や貸主の指定業者である場合が一般的です。

賃貸物件のオーナー(貸主)は、物件をリフォームし次の入居者に適切な状態で引き渡す必要があり、入居者様(借主)が入居中に発生させた損傷や汚れをリフォーム工事により修復することで、良好な状態を維持します。

 

物件の価値維持

新築当時はすべて「新品」であり、傷や汚れが限りなく少ない状態ですが、一度でも入居すると「原状回復工事」はほとんどの場合で必要になります。

原状回復工事の主な工事はハウスクリーニングとクロスの張替が多いですが、他にもクッションフロアの張替、フローリングや建具の凹み・傷等の補修、部品の欠損、様々な部材の緩み・故障、パッキン等からの漏水、網戸の破れ、畳の表替え・裏替え、塗装ほか様々な工事があります。

劣化や損傷の大小によって変わりますが、それがリフォームされずに放置され続けると、物件の価値自体が下がるばかりか、新しい入居者様が入っても不備の連絡が入ったり、仲介業者様からの問い合わせが少なく、場合によっては部屋の契約がなかなか決まらず、長期空室等になってしまう等のリスクがあります。

 

法律上の義務

借主が故意や過失でつけた傷や汚れについては、原状回復義務として借主が修復することが求められています。基本的な考え方は国土交通省の「原状回復ガイドライン」に記載されております。貸主負担と借主負担、経年劣化と通常損耗、故意・過失による損耗等がありますが、本コラムで法的根拠を記載すると長く複雑なコラムになりますので、ここでは省略させていただきます。

 

原状回復工事の大事なポイント

  

借主側から見た原状回復工事とは「借りた当初の状態(経年劣化・自然損耗を除く)」に戻す事ですが、貸主側から見た原状回復工事は「物件の価値をいかに維持できるか」が大事です。年数とともに設備や内装は劣化し、それに伴って家賃も新築時から少しずつ下がっていくのが一般的ではありますが、家賃をいかに維持できるか。もしくは物価高騰時であれば、その物価高騰・経費の上昇対して、少しでも家賃に反映することができるかを考える必要があります。(※地域の空室率や築年数によって、家賃上昇は物価高騰時でも厳しい場合もあります。)そのため大事なことは、具体的にどのようにリフォームするかを判断する営業や施工管理者の「視点と提案」と実際に施工する「職人の質」と「施工管理」にあります。

  

1.視点と提案

リフォームの範囲と内容の提案は、そのリフォーム会社や担当者によって異なると思いますが、提案時点では「本当に直すべき箇所」を適切に確認し、見積もりに反映できるかが大事です。細かい箇所を含めた不具合の発見はもちろんですが、リフォームが終わった後、お客様の内覧時における「 気になる点 (マイナスポイント) 」の積み上げをいかに減らせるかです。目に見えるものであれば、床・クロス・建具・サッシ・設備における傷、汚れ、部品の欠損、不具合等。感覚的なものであれば、前の入居者様のタバコ臭や生活臭や油の臭い、建具の開閉のスムーズさや音等。細かいことであったとしても、その積み重ねで「住みたい」と思わなければ、他の競合物件への申込となるケースは多くあるため、直すべき箇所はしっかりと直し、マイナスポイントを減らすことが必要です。

 

2.職人の質と施工管理

原状回復工事においては、設備修繕・クロス・床等の内装工事・ハウスクリーニングは特に大事です。

設備修繕で特に多いのは、部品の欠損や水栓のパッキン劣化による水漏れ・排水管の流れの悪さ等、他にも多くありますが、これらはしっかりと目を通しておかないと、見積もりには反映されません。例えば、築年数が経った物件において、水栓のパッキンからの水漏れやトイレボールタップ故障による便器内への漏水は実際に流してみたり、少し時間をかけて見ないと分からない事もあります。

最初の時点でそういった項目が見積もりに反映できればベストですが、職人さんがリフォーム中に不具合を発見した場合、施工管理者に対して報告ができるかも大事です。賃貸リフォームの場合は単価ばかりが重視されるようなケースもあり、一部では巡回不足やしっかりとした施工管理ができておらず、そういった職人さんからの報告やコミュニケーションが図れない場合もあると聞きます。

施工管理においては、それぞれの工事で現場に行き、最初に施工内容の指示・注意点の説明、できれば施工中、仕上がり前にも確認、次工程の職人に引き継ぐことがないか、不具合や部品の欠損等がなかったかを確認できればなお良いと思います。

 

内装工事に関しても、メーター単価がいくらで…という価格基準で、多い数量を手早く施工するというのは、実際よくある話です。しかし賃貸リフォームであっても、下地処理などの「手間をかける仕事」を丁寧にできるかどうかで、次工程のクロス貼り・床張りの仕上がりが違ってきます。またクロスのカッターの入れ方や貼り方、仕上がりの際に打つボンドコークでも職人さんによって、見た目が変わってきます。下地処理があまく凹凸が目立ったり、時間が経つと隙間が目立ってきたり、クロスが取り合いがめくれたり、クロスのりの拭き取りが甘く、しばらく時間が経ってパリパリに乾いた糊が見えてくる等の事象が出てくる場合があります。それなりに手間をかける仕事をきっちり行わないと、そのままリフォームが施工完了となり、時間が経つほど、後々になって違いがわかります。

  

ハウスクリーニングにおいては、本当に「職人の腕」で見違えるように仕上がりが異なります。特に水回りや床の仕上がりはよく目につく場所であり、清潔感がとても大事です。

キッチンであれば、水栓やシンクなどの「輝き」が出る箇所は徹底して磨くことにより、ぐっと印象が良くなります。ただしステンレスシンクの輝きに関しては、どの程度まで求めるかにより、作業手間も変わってきます。研磨の1つで、「バフ研磨」といって粗い研磨~中程度の研磨~細かい研磨と順番に10工程ほどかけて、表面を研磨していく工法があります。手間と時間がかかる作業ですが、新品に近いような輝きを戻すことができます。

浴室の清掃に関しても、リフォーム会社や職人さんにより、違いが出てきます。浴室の汚れには多くの種類があり、水垢、石鹸カス、カビ、皮脂汚れ、それらが複合・固着した汚れと多岐にわたり、原因に応じて掃除方法や使用する洗剤も変えることが大切です。賃貸物件のハウスクリーニングの場合は、1日で多量の仕事をこなさなければならず、全ての種類の汚れをとりきるのは時間的に難しいケースがありますが、可能な限りそれらの汚れを取ることで、仕上がりは違ってきます。

 

ここで記載した工事以外にも大切な点は多々ありますが、1つ共通して言えることは、きっちりとしたメンテナンスを行い、次の入居者様にとって良い住環境を作ることは、「物件の価値を維持する」とともに「長く住んでいただける部屋にする」ことであり「設備寿命を延ばす」ことにも繋がります。良いリフォームを継続することができれば、仲介業者様からも「この物件のリフォームであれば安心して、ご紹介・ご案内できる」と思っていただけるようになり、案内の数も増えると思います。

 

 

アルファ物産は、尼崎市・伊丹市を中心とした「阪神間」で地域密着でリフォーム工事を行っております。

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